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福岡地方裁判所 昭和43年(わ)145号 判決 1969年4月25日

本籍

福岡市千年町三丁目一番地

住居

同市対馬小路一〇街区一八番地

会社役員

岡部章一

大正九年一二月八日生

右の者に対する旧法人税法違反、法人税法違反被告事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役八月および罰金一〇〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金二、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

この裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は、福岡市中州四丁目六番一八号に本店を置き遊技場(パチンコ店)の経営を業とする、株式会社大洋ゲームセンターの取締役として、同社の営業を事実上統轄しているものであるか、同社の代表取締役岡部重蔵と共謀のうえ、同社の業務に関して法人税を逋脱しようと企て、

第一、昭和三九年二月一日から昭和四〇年一月三一日までの事業年度における同社の所得金額は二三、七一六、五七五円であり、これに対する法人税額は八、八一二、七〇〇円であつたにかかわらず、売上の一部を公表帳簿から除外し、これを架空名義の普通預金に入金するなどして同社の所得を秘得し、昭和四〇年三月三一日所轄博多税務署長に対して、右事業年度の所得金額は八四一、七一五円であり、これに対する法人税額は二三一、〇七〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右差額法人税八、五八一、六〇〇円を逋脱し

第二、昭和四〇年二月一日から昭和四一年一月三一日までの事業年度における同社の所得金額は一七、六七八、九八二円であり、これに対する法人税額は六、三二五、七〇〇円であつたにかかわらず、前同様の方法で同社の所得を秘匿し、昭和四一年三月三一日所轄博多税務署長に対して、右事業年度の所得金額は一二一、〇一八円であり、これに対する法人税額は二、四四〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右差額法人税六、三二三、二〇〇円を逋脱し

第三、昭和四一年二月一日から昭和四二年一月三一日までの事業年度における同社の所得金額は九、三六一、九五三円であり、これに対する法人税額は二、九九〇、三〇〇円であつたにかかわらず、前同様の方法で同社の所得を秘匿し、昭和四二年三月三一日所轄博多税務署長に対して、右事業年度の所得金額は△一、五七六、一一八円(欠損)であり、これに対する法人税額は△七六、〇一三円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もつて不正の行為により右差額法人税三、〇六六、三〇〇円を逋脱し

たものである。

(証拠の標目)

判示事実全部につき、

一、被告人の当公判廷における供述

一、被告人の検察官に対する供述調書

一、被告人作成の「定期預金および通知預金の確認書」と題する書面

一、被告人作成(岡照子代筆)の「架空名義普通預金の確認について」「勘定科目別明細についての上申書」「簿外仕訳についての上申書」「簿外給料および防犯特別費支払明細書の再提出について」「使途不明金の解明についての上申書」と題する各書面

一、岡照子の検察官に対する供述調書

一、岡照子作成の「自39・2・1至40・1・31事業年度、自40・2・1至41・1・31事業年度、自41・2・1至42・1・31事業年度の売上除外額および架空名義普通預金入金明細書について」と題する書面

一、大蔵事務官作成の上申書

一、押収してある法人税確定申告書三綴(昭和四三年押一一二号の一ないし三)

(法令の適用)

被告人の判示第一の所為は刑法六〇条、昭和四〇年法律三四号の法人税法付則一九条により、昭和二二年法律二八号の法人税法四八条一項に、判示第二、第三の各所為は刑法六〇条、法人税法一五九条一項にそれぞれ該当するところ、情状によりいずれも所定刑中懲役刑と罰金刑とを供科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪なので、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により最も重い判示第一の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により判示第一ないし第三の各罪所定の罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内で被告人を懲役八月および罰金一〇〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは、同法一八条により金二、〇〇〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予することとする。

よつて、主文のとおり判決する。

検察官松原秀之出席

(裁判長裁判官 真庭春夫 裁判官 富田郁郎 裁判官 白井博文)

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